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2019-10-04

私を変えてくれた

中学生ぐらいの頃からだろうか。自分に自信が持てなくなり、自分の事を忌み嫌うようになったのは。

成長期に急に肉付きが良くなり、ニキビが顔中に吹き出し、視力がガタ落ちした、というよくある変化だったのだが、結果的に私はデブでニキビ面でビン底眼鏡というティーンエイジャー時代を過ごした。

鏡で自分の姿を見るたびに溜息をつき、誰かを好きになるなんてとんでもない、私なんかに好かれたら絶対に気持ち悪がられる、と確信していた。

そんな私は中高生時代、男子生徒とほとんど関わらずに過ごした。勿論色恋沙汰など無縁で、時は過ぎそのまま大学生になってしまった。

 

高校受験のストレスを「走る」という運動で発散していた私は、高校三年生の頃少し痩せる事に成功していた。走っていた事で代謝が良くなったのか、ニキビも大分落ち着いてきた。

それでも私は相変わらず自分に自信が持てず、特に男性とはまともに話す事もできないほど、おどおどしていた。

そんな私を変えてくれたのは、同じゼミだった男子学生だった。

彼はとても人懐っこく、私とも積極的にお喋りをしてくれた。そればかりでなく、私の事を「しっかりしているから」と、よく頼ってくれた。

また、悩み事や相談事があると言い、二人きりで食事に誘ってくれる事もあった。

その悩み事が恋の悩みだったりしたわけだが、私には彼に対して恋愛感情を抱くなどという大それた事はできないという思いがあったため、それでも全く気にならなかった。

むしろ、彼が積極的に仲良くしてくれたおかげで、他の男子学生たちとも普通に接する事ができるようになったのだ。

 

モテたい、と思ったわけではないが、せめて普通の女性にはなりたいと思い、私は更に少しダイエットをし、それからビン底眼鏡からコンタクトに切り替えた。ニキビはいつの間にかすっかり消えていたし、ある程度の化粧やお洒落を覚えて、少なくとも鏡を見ても自分に嫌悪感を抱く事はなくなった。

自分に少しだけ自信を持てるようになった私は、そのきっかけをくれた彼に感謝していた。

その気持ちが感謝だけなのか、それとも彼の事を好きなのか、自分でもよくわからなかった。なにしろ、今まで恋愛感情というものと向き合ってこなかったのだから…。

ただ、間違いなく言えるのは、卒業して彼と離れ離れになるのがとても寂しいという事だった。それは友人としてなのか、そうではない特別な感情なのか、分からなかった。

もうひとつ確信を持てたのは、彼はきっと、私に好きだと言われても、迷惑だとか気持ち悪いだとか、そういった感情を抱かずに、気持ちだけでも受け入れてくれるだろうということだった。そう思えただけでも、私にとっては大きな事だった。

 

自分の気持ちがよく分からないまま、卒業の日を迎えてしまい、私は試しに彼に告白してみることにした。答えは「NO」だった。理由は「恋愛関係になって、やがて終わりが来るのは辛い。いつまでも友達でいてほしい」というものだった。

この答えの捉え方は、おそらく人それぞれだと思う。でも、私は嬉しかった。嫌な顔ひとつ見せずに、真面目にこの答えを返してくれたことが。私を大切に思ってくれることに変わりはないことが。

 

そして社会人になって早十年、今でも彼とは良い友達のままだ。

何かきっかけがあれば、私からも彼からも連絡を取り合い、飲みに行ったりイベントに出かけたりしている。疎遠になることなどなく、良い関係を続けられていることを、今私はとても幸せに感じているのだ。

 

 

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