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2019-10-11

敬老の日に

敬老の日に孫たちが遊びに来るというので、私は久々にそわそわした気分になっていた。

息子も娘も東京で暮らしていて、私の家までは車で四時間ほどかかるため、そう度々は遊びに来てくれない。

敬老の日だからといって、顔を出してくれる事などほとんど無かったのに、一体どういう風の吹き回しだろうか。

ばあさんが逝ってしまったからかな…。私はふとそんな事を思った。

妻が先立ってから半年。私が落ち込んで寂しい思いをしていると気遣ってか、息子一家も娘一家も、敬老の日に一緒に遊びに来ると言い出したのだ。

そんなに気を遣わなくても、俺は大丈夫なんだが…。

私は、息子や娘に心配されているらしい事に僅かな苛立ちを覚えた。子どもに心配される親など情けない、と自分自身に腹が立ったのだ。

ただ、孫の顔が見られるのは嬉しい事だから、それは素直に喜び、孫たちの来訪を待ちわびていた。

 

敬老の日、我が家は大層賑やかな雰囲気に包まれた。

小さな子どもたちの元気な声が弾けて、私も束の間の団らんを楽しんだ。

息子も娘も孫たちも、妻に線香をあげて手を合わせ、挨拶してくれた。そんな姿を見て、図らずもホロリときてしまった。

寿司の出前を取り、娘が買ってきてくれたケーキを食べ、ひと息ついたところで孫たちがそわそわし始めた。

サプライズか何か仕掛けるつもりだな。私はそう思い、わざと何も言わずに孫たちの様子を見守った。息子も娘も苦笑いしながら、そわそわする孫たちを見守っていた。

孫の中でも一番年上の男の子と二番目の女の子が、二人でラッピングされた箱のようなものを持ってきて「おじいちゃん、はい、これ、けいろうの日のプレゼント」と言って私に手渡した。

そして孫たちが、息子の「せーの」という掛け声で一斉に「おじいちゃん、けいろうの日、おめでとう」と声をそろえた。

私は「ありがとう」と言って大げさなくらい目尻を下げて笑顔を作った。そして「何かな~」とわくわくするような素振りを見せて包みを解いた。

 

中から出てきたのはアルバムだった。

アルバムには、妻と私の思い出がぎっしり詰まっていた。

「これは…」

私はアルバムをめくり、目頭に何か熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

「俺たち二人で実家から写真かき集めてさ、作ったんだ。親父、こういうの疎いだろ。何か母さんとの思い出を形に残せたらと思ってさ」

息子が照れながらそう言った。

「お兄ちゃん、もうずっと前から敬老の日にお父さんにお母さんとの思い出アルバムをプレゼントするって計画立ててたんだから。孫たち連れてワイワイ賑やかに盛り上げて寂しくないようにって予定調整してさ」

娘も笑いながらそう言った。

 

私はこみ上げてくるものを制する事ができなくなり、ポロポロと涙を流した。

「おじいちゃん、どうしたの?」

「かなしいの?おじいちゃん…」

孫たちが心配そうに私に声をかける。

「いや、おじいちゃんは今世界一幸せなんだよ…」

私はそう言って、駆け寄ってきた孫たちをギュッと抱きしめた。

そして妻の遺影を見つめて「お前と出会って最高の子どもと孫に恵まれて本当に幸せ者だ」と心の中で感謝の言葉を唱えた。

 

 

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