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2019-12-19

寒空のイルミネーション

クリスマスのイルミネーションが煌びやかに街中を照らす。

付き合って初めてのクリスマス。

クリスマスといえばイルミネーションでしょ、と彼女が言うので、都心のイルミネーションを見に出かけた。たまたま寒波が襲ってきていて、ものすごく寒く、芯から冷えるような日だった。

彼女は折角のデートだからとお洒落してスカートとヒールで来ていたが、明らかに寒そうな恰好で、僕は気が気じゃなかった。コートはとても温かそうだったが、足元が寒そうで、無理しているんじゃないかな、と思った。

なるべく早くイルミネーションを見て、暖かいところへ避難しようと思い、ソワソワしていたのだが、クリスマスイブのイルミネーション階上は混雑していて、なかなか列が進まなかった。

彼女の身体が冷えてしまう…。そう思っていたのだが、そのうちに僕自信の身体が冷えてきた。

元来暑がりの僕は、この日に特に着込んでいたわけではなく、寒波をなめた服装だったためじわじわと冷気が体内に浸透してきたのだ。

僕でさえこんなに寒いのに、彼女は一体どうなっているんだろう。

「大丈夫?寒いでしょ?」

僕がそう聞くと、彼女は白い息を吐きながらニッコリ笑って答えた。

「寒いけど、こうして一緒にいられればあったかいよ。それに、今日は防寒バッチリだから大丈夫」

聞けば、身体中にカイロを仕込んできたそうだ。履いているタイツも発熱するような素材を用いたものでとても温かいそうだ。

「それに、これがあるから、もっとあったかくなるよ」

そう言って彼女は水筒を取り出した。そして、蓋を開けて口をつける事なく僕の方に差し出した。

「はいっ。飲んで体をあっためて」

水筒からは湯気が立ち上っている。

「え、僕は良いよ…」

そう答える僕を遮って、彼女は言った。

「ダメ。声が少し震えてるもん。寒いんでしょ。風邪引いてほしくないもん」

寒いと感じていたことがバレてしまっていたようだ。

僕は水筒を傾けた。体の中に温かい紅茶がじんわりと広がる。ほっとする気分になれた。

「ありがと」

そう言って水筒を返すと、彼女も少し飲んで、ハァッと息を吐いた。

「あったかいね」

「うん、あったかい」

白い息がくゆる中、時がゆっくりと流れる。

そして目の前には色とりどりの光をたたえたイルミネーション景色が美しく広がっている。

僕はそっと彼女を引き寄せて抱きしめた。

彼女の身体中に貼られたカイロの熱が微かに伝わる。

「人間カイロだ」

思わずそう呟くと、彼女はクスッと笑った。

「早くあったかいお店に入ってご飯食べよっか」

彼女はそう言って、僕の手を引く。

人混みの中でも音が止まったように、静かにイルミネーションが輝いていた。

 

 

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