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2019-10-21

恋焦がれ

恋焦がれるという言葉があるけれど、本当に焦げ付くようなヒリヒリとした痛みを伴う恋をした。切ないという言葉が、まさにピッタリはまるような、そんな恋だった。

 

恋愛、あるいは夫婦間の愛情には、二種類あるように思う。

ひとつは、恋わずらいとか、盲目的な恋とか、破滅的な恋とか、そういった切なく苦しく焦がれるような恋。

もうひとつは、温かく、安心感のある、居心地の良い恋。

後者のカップルが結婚すれば一生穏やかに過ごす事ができて、男女間の関係性も上手く続けていけるだろう。

前者のカップルは色々な意味で危険をはらんでいる。脆く、儚く、危なっかしいような、そんな恋でありながら、焼けつくすように燃え上がる情熱的な恋でもある。このタイプの恋の厄介なところは、麻薬のような陶酔感に襲われ、その中で酔いしれる事により幸せを感じてしまうというところだ。

 

私がした恋は、まさに前者の危険を孕んだ恋だった。

相手の男性との出会いは、友人の紹介だった。

たまたま私と友人が出かけていた時に、彼とバッタリ出くわして、その時に紹介してもらったのがきっかけとなった。初めて会った瞬間から、私の心は彼に奪われてしまった。

一目惚れなどしたことのなかった私は自分自身の心境に驚きながらも、彼に聞かれるままに連絡先を教えていた。

それから彼と何度も連絡を交わして、私たちは恋仲となった。

彼は、きちんとした仕事に就いておらず、アルバイトを転々としていた。彼はミュージシャンを目指していたのだった。

夢を語る彼の瞳はキラキラと輝き、その瞳は私を虜にした。

私が彼を支えるんだ、という強い責任感を感じ、彼には私がついていなければ、と自負していた。

 

彼と私は互いに情熱的に求め合った。

まるですがるように求めてくる彼に、私もまた、全力で応えたし、私も彼に依存していた。

彼無しの人生など、考えられなかった。

彼と離れ離れの夜には、布団の中にもぐれば必ず彼を思い出し、彼のことを思いながら眠りについた。

彼と連絡がつかなくなれば不安に押しつぶされそうになり、メールの返信が遅い時には「何か気に障る事でも書いてしまったのではないだろうか」と何度も何度も自分が送ったメールを読み返した。そして彼から返信が来ればようやく安心するのだった。

そんな彼との関係は、長くは続かなかった。

彼はある日突然姿を消した。私が住んでいたアパートに入り浸って半同棲のような形になっていたのだが、ある時からパッタリと姿を見せなくなったのだ。

そして連絡もつかなくなった。

彼に一体何が起きたのか分からないまま、不安に押しつぶされそうな、気が狂いそうな日々を過ごしたが、やがて冷静になり、自分の生活を取り戻した。

それでも彼への気持ちは変わらない。

 

今でも彼との連絡は取れず、居場所もわからない。

いつの日か、テレビかショップか、何かそういったメディアに彼の姿を見つける日まで、私は彼の活躍を信じて彼を想う。

 

 

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